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インフレ見通しでも物価連動国債にはデメリットやリスクがあるよ

最近は物価上昇やインフレの話題が続いていますね。こういった状況ですと、もし物価上昇に連動して価格も上昇する投資商品があったらいいなって思いますよね。

皆さんは物価連動国債って聞いたことありますでしょうか?これはその名の通り、物価が変動すると利息や元本が変わる国債なんです。

普通の国債は基本的に元本は変動しないものですが、物価連動国債はインフレ(物価が上がること)やデフレ(物価が下がること)に連動して利回りや元本が変わります。投資家は投資中に物価が上昇しても、それに見合った資産価値を維持できため、一定のニーズがある国債となっています。
インフレ時には結構儲かる商品なんじゃない?って思うかもしれませんが、デメリットやリスクも当然あります。

本記事では物価変動国債のメリット・デメリットやリスクについて解説します。

物価連動国債ってなに?

物価連動国債の特徴

物価連動国債の一番の特徴は、元本が全国消費者物価指数(CPI)に連動して増減することです。
例えば、100万円で買った国債があって、1年後にCPIが2%上がったら、元本も2%増えて102万円になります。
一方で、100万円で購入したのち物価が2%下落したら、元本は98%になってしまいます。なお、後述しますが、元本の増減に応じて受け取る利息も変動します。
元本が増えるにしろ、減るにしろ、償還時の物価に応じたものとなるため、理論上は貨幣の価値は変わらないものと考えることができます。

例えば物価の5%上昇により元本が105%になっていても、おにぎりの価格が100円から105円になっていれば、お金の価値は同じですからね。物価下落時も同じです。

特徴のイメージ

物価上昇時の物価連動国債の動きCPIの上昇に応じて国債の想定元本も上昇する。この場合は物価が20%上昇したので100万円の元本が償還時に120万円になっている。
物価下降時の物価連動国債の動きCPIが低下すると国債の想定元本も減少する

連動する指標「消費者物価指数(CPI)」ってなに?

消費者物価指数(CPI)というのは家庭が買うものの価格変動を測る指標で、物価がどう動いているかを知るために使われます。
食品や衣料品、住居費、交通費、医療費などの価格をもとに計算されています。CPIが上がることをインフレ、下がるとデフレをと呼ばれます。

このCPIは総務省統計局のホームページで確認することができます(リンク:総務省統計局HP

利息はどう変動する?

例えば、10万円の物価連動国債を買ったとして、利率が0.5%、年に一度利息がもらえるという条件で考えてみましょう。

まず初年度は元本が10万円なので利息は500円(10万円×0.5%)もらえますね。
次の年にインフレ率が2%だったら、元本は102,000円に増えるので利息は510円(102000×0.5%)になります。元本が増えた分だけ利息も増えるわけですね。

物価連動国債の動き物価上昇によって元本が上昇した分だけ利息も増加する。

インフレが続けば元本と利息がどんどん増えるから、資産の価値を保ちながら利息を増やすことができます。

普通の国債と比べてみる

普通の国債は元本が固定ですから、インフレが進むと実質価値が減ってしまいます。

下の図の通り、同じ100万円の国債を持っているとして、インフレ率が2%だったら、次の年には実質的な元本の価値が約980,392円に減ってしまいます。

通常の国債がインフレになった時の価値通常の国債がインフレの影響を受けると実質的な価値が低下します。

したがって、物価連動国債はインフレによる実質元本価値の低下を防いでくれていることが分かりますね。

物価連動国債のメリットは?

これまで説明したとおり、物価連動国債は物価に連動するため、償還時にインフレやデフレなどの物価変動に対して元本の価値を維持できることがメリットといえます。

また、物価上昇時(インフレ)には想定元本が増加しますので、その分の利息が増加することが通常の国債と比較して有意な点となります。

物価変動国債のデメリットやリスクについて

一方で良い事ばかりではありません。物価連動国債にもデメリットやリスクがありますので押さえておきましょう。

物価が下落すると利息と償還額が減少する

物価(CPI)に連動するため、満期の時点でデフレになっていれば、償還額も少なくなります。物価に連動しているためお金の価値は変わらないとは先述しましたが、あくまでこれは理論上の話。デフレで全体の物価が定価していても価格が変わらないものもあります。

これに加え、毎年の利払時点(年1回と仮定します)で物価が購入時より下がっていたら、想定元本が低下するため、その分の利息が少なくなってしまいます。

償還時に物価が低下した場合最終償還時に物価が下落していたら、返ってくるお金も減少してしまう。

発行価格が市場のインフレ予想に左右されるため、投資額を回収できないリスクがある

最も注意しなくてはならないリスクは発行価格です。
インフレが予想されている時、額面10万円の物価連動国債を10万円で買えるということはありません。将来の償還価額が10万円を上回る期待がある時、額面10万円の国債の売買価格は10万円以上の価格となります。つまり需要が増えれば増えるほど、高い値段がつくんです。

この時の価格の見極めが大事なんですが、例を挙げて説明します。
100万円の物価連動国債を105万円で買ったとしてシミュレーションしてみましょう。

100万円の債券を105万円で購入したケース100万円の債券を105万円で購入した場合、5%以上の物価上昇がないと額面上は回収できない。

上の図では物価が2%上昇したのにもかかわらず、購入価格が高かったため最終的に3万円の損失が発生してしまいました。
物価連動国債を購入する際は、購入価格と物価上昇の見通しを比較して、物価上昇のほうが高く見積もれるか予測する必要があります。特に長期保有する時は、予想するのがかなり難しいといえます。

ただし、今回は仕組みの説明なので割愛しますが、本来はこれに金利収入も含めてトータルでどの程度の儲けが出るかを計算します
複雑な計算と予測が必要ですので、単純に「インフレ傾向だから買っておこう」というのはあまりお勧めできません。

投資信託で買うことになるので手数料も加味しなくてはならない

最後に、物価連動国債をいち消費者が直接購入することは難しく、基本的に購入は物価連動国債に対応した投資信託商品となります。
この場合、信託報酬や運用管理費用などの手数料もかかりますので、さらに収益が圧迫されるリスクもあります。

まとめ

物価連動国債はインフレ対策として魅力的ですが、インフレが見込まれる=絶対儲かると考えるのは誤りです。

デメリットもしっかり理解しておき、元本保証の範囲や発行価格と額面価格の違い、利息の変動、手数料そしてインフレ期待の不確実性など、いろんな要素を総合的に考えて投資するようにしましょう。

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