日本経済

マイナス金利とは何だったのか?その概要を復習してみよう

2018年12月現在も日銀の政策決定会合で決定されたマイナス金利導入が金融市場の尾を引いています。当記事では、そのマイナス金利をまだ理解されてない方向けに解説していきます。

avatar

耕作

以下は2016年1月29日付の日本銀行による政策決定会合議事録の抜粋です。
まずこちらをご覧ください。

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定した。今後は、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、金融緩和を進めていくこととする。
出典:2018.1.29日本銀行政策決定会合議事録

日本の中央銀行である日本銀行は、金融政策決定会合と呼ばれる定期的な会議を経て様々な金融政策を策定、発表しています。
私たち金融関係者はもちろんのこと、マーケット・経済に関心のある人々は、上記の2018年1月に開かれた会合の発表を知り衝撃を隠しきれませんでした。
マイナス金利導入というのは、日本において初めての政策であり、誰も経験したことのない事態だったからです。

そもそも金利とは何か

金利というものは、資金の貸し借りを行うときに借りる人から貸す人に対して支払われる利息の割合のことをいいます。
例えば100万円の貸し借りをするときに、借りる人が1年につき1万円を貸す人に対して支払うとしたら、この貸し借りの金利は年利1%(1万円÷100万円)となります。この1%が金利です。

そもそもお金を借りる際に金利が発生する理由は何でしょうか?
その答えは、お金というものは持っている分だけ運用に回すことができるということ。お金は定期預金、投資信託、株式運用などによって時間を使って増やすことができます。そのため他者に貸し出すということは貸している期間だけ運用のチャンスを逃すということであり、それに見合った手数料をもらうというのが金利が存在する理由です。

マイナス金利とは何か

では、その金利がマイナスになるということはどういうことでしょうか?
金利がマイナスであれば、お金を借りた人は貸してくれた人から更に借りた期間分だけ利息を受け取ることができてしまいます。なんだか変な感じがしませんか?

これについてはお金の現在の価値と、将来の価値という観点から考えてみます。
金利がプラスの時はお金の現在の価値が高く、マイナスの時は逆に現在の価値が低いということになります。
下記のイメージ図をご覧ください。

なぜ金利がマイナスとなったのか

まず日銀当座預金についてご説明します。日銀当座預金とは、日本銀行が各金融機関から受け入れている預金のこと。銀行や証券会社など約700の金融機関が預金を行っており、この預金口座内で金融機関同士の資金の送金が行われたりしています。
日銀当座預金は、金融機関に対して顧客からの預金の一定割合を預け入れなければならない準備預金制度という制度を設けており、預け入れる金額(預金準備率)を操作することで、金融機関の預金量を操作する金融施策を行っています。

ここからが本題です。
マイナス金利の政策を開始してから、日銀はこの日銀当座預金において預金準備金(預け入れなくてはならない金額)を大きく上回る預金に対して、マイナス金利を適用することとしました。
これによって一定額以上の資金を預け入れる金融機関については、預け入れ額が大きければ大きいほど、日銀対して金利を支払わなくてはならなくなったのです。

一般的には日銀の金融政策は短期金利に強く影響するものであり、長期金利に対する影響は限定的です。
しかしながらこのマイナス金利導入後、長期金利まで大きく影響を受けることとなりました。その要因は以下の2点にあります。

①短期から長期市場への波及

金融機関は余ったお金を日銀当座預金に寝かせておくだけで、どんどんと損失が膨らんでしまいます。
そのためマイナス金利が適用されてしまうお金を払い出し、短期金融市場で運用を開始せざるを得なくなります。

すると短期金融市場にお金が流れ込むため、短期金利(短期国債など)も低下し、マイナス金利に突入することになります。ですが日銀に置いておくよりはマイナス幅が小さいのでまだマシだったのです。

その後は次から次へと金利が高い長い期間の市場にお金が流れていくこととなりました。
こうして短い期間から順にプラス金利からマイナス金利へ移り変わっていったのです。

②日銀による長期国債の買い入れ

通常、国債を買い求める人が多くなると国債の価格は上がり、利回りは低下します。マイナス金利導入移行は利回りがマイナスとなったため、満期までもし保有してしまったら、投資したお金は目減りしてしまいます。

それでも買い手が減らなかったのは、日銀が長期国債を買い取るということを約束していたからです。
これにより金融機関(投資家)は満期まで保有することなく、日銀に買い取らせて利益を得ることができたのです。

マイナス金利導入時の声明文には、毎年80兆円の資金供給(マネタリーベース)の拡大を図ることも明記されており、主に国債の買い取りによって、市場への資金供給を行うとしていたのです。

この結果、マイナス金利導入から11日後に10年ものの国債が▲0.035%と、史上初のマイナスとなったのです。

なぜマイナス金利を導入したのか?その結果は?

マイナス金利政策は、①金融機関が日銀に預け入れているお金を企業や個人の融資に回させ、世の中により多くの資金を流し、デフレの解消と景気の回復を図ること、②消費者の預金金利を低下させ、預金から投資や消費へシフトさせることを目的として導入されました。

私たち消費者にとってのマイナス金利の恩恵は、住宅ローン金利の低下が代表的なのではないでしょうか。
10年物の長期国債の利回りというものは長期金利の代表的な指標であり、住宅ローンや金融機関の企業への貸出金利の基準となるものです。したがってマイナス金利導入により個人・企業ともに金利が低下したため、ローンの借り入れがしやすくなり、住宅購入や企業の設備投資への敷居は低くなりました。

一方で、金利の大幅な低下は金融機関や個人の資産運用を難しくさせてしまいました。
国債利回りが大幅に低下したことから、銀行や保険会社、年金基金などは資産運用が難しくなり、生命保険会社の間では一部の保険商品を値上げしたり、販売をとりやめたりする動きが広がりました。また、銀行などでは貸出金利の低下による収益減少が進み、本業(貸出収益)の収益力が大幅に低下したことが問題となっています。

また、金利の低下に伴う不動産市場の過熱も問題視されることとなりました。
資金を借りやすくなった個人が、節税や投資の一環として賃貸住宅を建設したり購入したりする動きが活発化しましたが、需要を上回る建設や、見通しの甘さによる問題が多発しています。
不動産は貸出の利ざや(利益)が大きい分野でもあり、銀行が過剰なまでに融資を伸ばした結果、不適切融資などの問題も表面化することとなっています。

簡素ではありますが、以上がマイナス金利の全体像となります。今後の経済動向をチェックするための基礎知識として覚えていただければ幸いです。